ブラック企業を逃げるように転職した南原純は、名前を変え過去から決別し人生をやり直そうとするが、彼の前に 現れる様々なヤバみのある人々により事態はより複雑になっていく……
右を向いても左を向いてもみ~んな可哀想
これは、どうしようもなく愛おしく
可哀想な境遇の人々の物語―
*やたらと歌があるのでご注意ください
*真面目に観ればいいのか笑えばいいのか困ったときはとりあえず笑っておくことをお勧めいたします
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(編集中…)
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舞台は近未来の日本。少子化は加速を続け、今や若者は希少な存在に。年金制度は崩壊寸前、晩婚化は怒涛の如く進み出生率も低下の一途を辿っている。この状況を打破すべく、現政権はついに大胆な政策に打って出る。それは『独身税』の導入だ。
成人したすべての独身男女に課されるこの『独身税』は、年齢を重ねるほど税率が上がる累進課税。独り身では暮らしていけないほどに生活を圧迫するこの鬼のような制度から逃れたい若者たちは、必死にパートナー探しに奔走するようになった。
独身生活が成り立つボーダーラインとして、いつしか、世間では『30歳になるまでに結婚』がキーワードに。しかし人間というものはより良い条件を追い求める生き物。もちろん結婚相手は誰でもいいわけではない。若者たちは少しでも好条件のパートナーを求め、ありとあらゆる手段を使って限られたパイの中でマッチングに奔走を始めた。今や婚活市場は絶大な盛り上がりを見せるホットなビジネスとなったのだ。そして今日も、若者たちは婚活を続けている……
明るい家庭を夢に見ながらも仕事に忙殺され続け出会いに恵まれず、気付けば来年で30歳の谷上エリサ。 結婚相談所「マッチングトゥデイ」に足を運んで生涯のパートナーを探しつつ、仕事も妥協したくない彼女はもっと自分が活躍できる場を求めて転職をする。
そんなエリサの転職先「クリエイティブジェネラル」は、1日の睡眠時間が15分で構わないワーカホリック集団。企画やコンサルができると聞いていたエリサだったが、社長の須藤直哉に命じられたのは納期がハチャメチャな超ヤバいアプリ開発案件。
連日睡眠時間を削られボロボロになっていくエリサだったが、クリエイティブジェネラルの同僚である愛澤耕作(結婚相談所担当)や嵯峨リンダ(相席屋担当)は、夜に「ルーモの集い」という出会いの聖地と呼ばれる宗教チックな会合にエリサを連れていく。そこにはディーリスト純というルーモの象徴がいて、彼の力をもってすれば成婚率100%を成し遂げることができるという。ディーリストの言葉に夜な夜な熱狂を続ける人々と、それを扇動する成尾将太をはじめとするクリエイティブジェネラルのメンバー。クリエイティブジェネラルとルーモの集いは蜜月関係だった。ルーモの集いで振舞われる謎のハーブの香りに、エリサは力がみなぎり高揚感を感じる。 親友の橋本パドメと娘の麗愛に近況を報告するエリサ。事のヤバさに絶句するパドメと、冷静に状況を分析する神童の麗愛。
一方で、独身税導入を決めた時の政権与党「国民幸福党」の大物政治家である小津一郎は、息子のルークを世襲の道にいざなうべく党大会で紹介を試みるが空振り。ルークは政治には興味がなく、役者として生きていくことを目指し小劇場などで活躍中の29歳。党大会よりも先日受けたオーディションの結果連絡を優先し離籍していた。息子の夢に理解は示しつつ、現実を受け入れるように諭す母の春恵。
その頃、警視庁港湾警察署の刑事である青霧島傑作と権田あやめは、ルーモの集いでクスリが流通しているとの情報を入手するが、すぐに捜査本部が設置され本庁からきたキャリア組の管理官である時田智美に捜査を仕切られてしまい、所轄刑事としてのむず痒さを感じる。
相変わらず身体をボロボロにしてマッチングアプリの開発中のエリサは、意識が朦朧とする中、遠くの故郷で農家をしている父親の谷上孝三郎と精神世界で謎の交信をする。エリサのことを心配して、早く結婚して孫の顔が見たいという思いを伝えつつ、いつでも故郷に帰ってこいよと声をかける孝三郎。ちなみにこの交信はどういう仕組みでそうなっているのかは、物語の最後まで特に解説されず謎のままである。
アプリ開発の進捗がよくないのに、相変わらずルーモの集いやマッチングトゥデイに駆り出されるエリサ。 その現場に潜入捜査を続ける青霧島とあやめだったが、婚活にスイッチが入ったあやめは結婚相談所主宰の愛澤に猛アプローチしなぜかカップル成立。愛澤はあやめを月に連れていくと約束する。それにやきもきしてしまう自分の感情が理解できない青霧島。
そしてエリサも運命的な出会いに恵まれる。その相手はルークだった。
脅威のラブパワーで踏ん張り続け、なんとかアプリを完成に導いたエリサ。クリエイティブジェネラルのメンバー一堂に祝福され、束の間の自由時間を手に入れる。自由を手に入れたエリサは真っ先にルークの元へ……行こうと思うがいったんパドメと麗愛の部屋をワンクッションはさみ……次のステップにつながる大き目の公演で主役を張っているルークの姿を観に行く。
心身ともに疲弊しきっていたエリサにとって、その公演はあまりにも自身に染み渡るものだった。感動するエリサを目の当たりにし、嬉しさが爆発したルークはエリサに結婚しよう!と口走ってしまう。ちょうど同じことを考えていたエリサ。2人が結婚を決意した瞬間だった。
そんなパヤパヤな2人の世界の裏では怪しい動きが進行中。警察がルーモに目をつけていることを察知した須藤は、懇意にしている小津一郎に事態を抑えこんでほしいと依頼。利害関係で結ばれている2人は、「共倒れするのはダサい」と認識を合わせ、獺祭で乾杯する。
小津に呼び出された時田は、小津の策略で店の会計を奢られてしまい、接待を受けた状態にされ、警察官僚の汚職スキャンダルという弱点を握られてしまう。更に小津春恵は時田のさらに上の階級である刑事局長を寝技で掌握し、事態を鎮静化させる。
急な上層部の方針転換に納得のいかない青霧島。しかしあやめはどこか心ここにあらず。問い詰めた青霧島に、あやめは愛澤から結婚の申し込みを受けたと話す。刑事という仕事にも未練がない様子のあやめだが、本当は数年前に暴漢に刺された時の古傷が痛み仕事が続けられなくなったためこっそり九州の実家に帰ろうとしているのだが、本編でそのことは特に語られない。ちなみに彼女の実家は種子島宇宙センターのすぐ近くで、幼い頃からロケットで月に行くのがあやめの夢だったが、本編でそのことは特に語られない。
エリサは実家の「緑里村」へルークを連れていき、ルークは父孝三郎へ結婚のあいさつをする。孝三郎は大歓迎。幼い頃から父親ひとりでエリサを育て上げてきた思いや、エリサを養うために恥を忍んでセリ農家からハーブ栽培へ切り替えた経緯を語る。
ルーモの集いでも婚約を報告したルークとエリサは、ディーリスト純とたくさんの信者に祝福され、結婚準備資金としてルーモの集いから特別に破格の利子で30万ルーブル(日本円で52万5,600円程度)の融資を受ける。
結婚へ向けて希望に満ちたカップルがいれば、一方で時世に流され形だけ結婚した須藤真奈美は、夫の直哉とふれあいがないことに対してさみしさを感じていた。それをしたリンダは、真奈美をうんとドエロい女に仕上げるべく、セクシーの極意を伝授する。
そんな中、エリサのおなかの中にはルークとの新しい命が宿っていたことが判明。まだルークの両親にも会っていない状況でのこの事態。パドメと麗愛に背中を押され、ルークとしっかり話して両親に会わせてもらうエリサ。父の孝三郎と一緒に面会することに。しかしそこで、どうしてルークが両親に会わせるのをためらっていたのか思い知ることになる。
小津一郎はとても古い思想の持ち主で、自分が描いていたルークの世襲へのシナリオが乱されることに非常に腹を立て、孝三郎には「誠意って何かね」ときつい口調で問いかける。そこに孝三郎は「逆じゃね?」と逆切れ。 政治家の家としてのあるべき姿を固持する小津家の両親に対し、自分がやりたいようにのびのびとやっていけばいいという方針の谷上家の考え方は相いれず。思想がぶつかり合う最悪の現場だったが、孝三郎が最終手段として用意していた億単位の結婚持参金を見せつけ、誠意として納めてもらうことでその場は収まる。 ただしルークに突き付けられたのは、役者を完全にあきらめて政治家として生きていく未来だった。実家の家業から逃れられないことに絶望するルーク。
場面は変わり、タワマンの高層階から愛澤と夜景を眺めるあやめは、時田に愛澤を逮捕させる。自宅にクスリを保管していることが確実に判明したためだ。あやめの愛澤への思いは本物だったのか、それともすべては悪をあぶりだすための作戦だったのか。本当のことは誰も知らない。あやめはただ一言、時田に「仕事ですから」とつぶやく。
そんな最中、ルーモから融資金の返済額について説明を受け驚愕するルーク。52万5,600円だった借金は、“破格の利子”で3,150万に膨れ上がっていた。愛があればなんとかなるからまずは愛するパートナーと結婚するぜ!と意気込むルークに、地に足ついたこと考えようよと諭すエリサ。あまりのルークの頼りなさに、将来に対する不安が膨れ上がる。ルークにはルークなりの思いもあるし、結婚は無かったことにしたくない。本当に2人でやっていくなら覚悟をみせてほしいエリサに対し、ルークは父親としっかり向き合うことを決意する。
ちなみにこの間に青霧島は、捜査本部は解散したにもかかわらず独断でディーリスト純に接近。ディーリストとは実は幼い頃同級生だったことが明らかになるが、真実に近づきすぎたためディーリストに撃たれてしまい瀕死状態になる。サーボーグとなり命を取り留めた青霧島は、酒蔵をやっている実家で療養中にふと実家を継ごうと決意するが、サイボーグ化した自分の体は酒の味がわからないということに気付き絶望する。耳が聞こえない作曲家ベートーヴェンならぬ、味覚のない酒蔵職人として大成していくのだが、本編では割愛されている。
またもうひとつ、小津一郎にはパドメとの間に隠し子がいて、それが麗愛だったということも判明。ルークと麗愛は兄妹で、小津一郎はルークの出来が悪いことを危惧しもう一人の後継者候補として麗愛を機にかけていたという話もあるのだが、本編では恐ろしくサラっと流して語られるだけである。
小津家に戻ったルークは、父が不在の間、母とゆっくり話をする。そこで見えてきたのは、独身税の過激さの裏にある様々なフォローの仕組み。この制度を組み立てたのは小津一郎の功績だと知る。政治の面白さや奥深さの片鱗を感じた瞬間だった。
そして帰宅した小津一郎。父と真正面から対峙するルーク。向き合って少しにじみ出てきたのは、小津一郎も自分なりの愛や正義をもって息子と接していたということ。政治とはやりがいのある素晴らしい仕事であると声高らかに諭す。
しかし自分の役者への熱い思いを存分ぶつけるルーク。その“覚悟”を感じた小津一郎は、政治家ではなく役者としての人生を応援してやると宣言。2人の気持ちが一つになった瞬間だったが、その瞬間、時田が小津一郎を逮捕しに来る。
愛澤の逮捕から芋づる式にルーモのハーブの闇が明るみになり、ルーモの集いとクリエイティブジェネラルの一部は摘発され、時田は一気に小津一郎つぶしに打って出たのだ。ちなみに谷上家の農家で栽培していたハーブは紛れもなくこのクスリだったため、谷上も逮捕され農場を失ってしまう。
ルーモの集いは姿を消し、クリエイティブジェネラルも解散。どちらも父親が逮捕され、仕事も何もかも失ったルークとエリサ。まっさらな状態になった2人。これから何でもできる2人。新しい命ももうすぐ誕生する。
まだまだ頼りにならないルークは、果たしてエリサが安心できるようなスーパースターになれるのだろうか…
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IT系下請け企業「ジェネラルワークスジャパン」に勤める南原純は、今日も無茶苦茶なスケジュールを組まれた納品へ向けて仕事に励んでいた。昼休憩の外出は認められず、昼食は会社から支給されるパンがひとつだけ(しかも給料天引き)。もうすぐ30歳を迎える彼は、鬼上司・邪兵武士のもとで仕事に忙殺され恋もできず会社と家を往復だけの日々で、20代を浪費していた。
そんなある日、南原は会社に営業に来ていた保険会社・星空生命の新しい担当営業の子守歩美に出会う。ノリの良い彼女に気に入られた南原は、もしも保険の懸賞でディズニーのチケットが当たったら一緒に行きましょうと、ディズニーガチ勢の子守に約束される。
抱えてたプロジェクトの納品が終わった南原の次の仕事は、マッチングアプリ・結婚相談所・フラッシュモブなど出会いのサポートをしているベンチャー企業「クリエイティブワーカーズ」の、マッチングアプリ改修プロジェクト。客先にひとり常駐し開発に着手した南原を待ち受けていたのは、絶望的に破綻した開発状況と、‟自己啓発タイム”と名付けられたサービス残業文化に浸る社員たちの死んだ顔。納期延伸を申し入れる南原に対し、温厚そうに見えた社長の小金澤誠は態度を豹変させ激怒。南原史上最低最悪のデスマーチが始まった・・・。
一方で今日も深夜の駅前には路上ライブにいそしむ地下アイドル、桃田すももの姿が。そこに偶然居合わせた山上耕一郎は、健気に頑張る彼女に好意を抱き、CDを買ったりネット配信で課金をしたりと、寝る間も惜しんで懸命に彼女を支援し始める。
南原はと言うと、会社泊りや深夜のタクシー帰りを繰り返している中、偶然帰り道で子守に出会う。一緒の方面だという理由でタクシーに相乗りし、ライン交換してきたり家の住所を教えてきたりと、南原にグイグイ来る子守。その話をクリエイティブワーカーズのメンバーにしても、みんな口をそろえて「それは脈アリだ!」と言う。
クリエイティブワーカーズの須藤直也のほうは、新橋のSL広場で住宅のアンケートと称して不動産投資の営業をかけてくる松本梨沙と話が盛り上がり、今度彼女の会社で詳しい話を聞くことになっていた。いわゆるデート商法なのだが、須藤さんはそれを分かったうえで松本に接近。彼の趣味はデート商法にあえて引っかかることだからだ。
相変わらず山上さんに課金支援を続けてもらっていた桃田すももは、総合アイドルプロデューサーと名乗る殿村城司に出会い、「千年に一度の原石だ!」とそそのかされて事務所へ所属。同じく事務所に所属する、衣装はセーラー服絶対主義の白崎ここあと一緒にユニットを組むことになるがシナジー効果失敗、ユニットは解散する。
仕事が閑散期になったジェネラルワークスジャパンではフレッツの新規営業コールに手を出し始める。連日すももの深夜ネット配信を見守っていたがために遅刻してしまった山上さんは、身体を椅子に、受話器を顔に固定され、ペナルティとして重労働を課され、のちに発狂。精神崩壊した山上さんはますますすももにのめり込んでいき、結果的に闇金に手を出すほどの借金を抱えることに。
結婚適齢期を超過気味の佐倉紅葉は、忙しい日々の合間を縫ってクリエイティブワーカーズの結婚相談所に通い詰めるが、気づけば担当の難波周と交際をすることになり、結婚話に花が咲く。婚約指輪を買ってくれることをそそのかされた佐倉紅葉は、勢い余って自分へのご褒美と難波の知り合いの店で80万のジュエリーを買ってしまうが、実はこれ原価2万。難波は結婚詐欺師だったのだ。
須藤さんは松本の会社に呼ばれ、「話を聞くだけ!」という条件で不動産投資の紹介をいちゃつきなが受けるが、そこへ上司の芦沢優子登場。言葉巧みに誘導され、気づけば須藤さんは投資マンションを35年ローンで購入することになった。この何とも言えない感情を発散するにはこうするしかないと、須藤さんは南原のデスマーチに他の社員も巻き込んで参戦。リソース総動員全力投球の結果、無事にアプリを完成させることができた。南原純、がんばるじゃん。
多忙な難波周の次なるターゲットは桃田すもも。もっと売れるために良い事務所を紹介するよと言葉巧みにすももを誘導し、ラブホテルに連れていく難波。しかしその瞬間を何者かに写真にとられ、すもものスキャンダルはネットに拡散される。これはもうアイドルの階段を踏み外したぞと、殿村はすももをクビにして滞納していたレッスン代などの借金を突き付け、「泡姫」の仕事に斡旋する。ちなみに芦沢さんも副業として、白崎も割の良い収入源として同じ店で働いている。
暇つぶしにいそしむ小金澤は、今度はジェネラルワークスジャパンを吸収合併し働き方改革を推進。仕事の方針で対立した邪兵は会社を去っていく。イエスマン成尾将太は態度を変え、邪兵から小金澤にボスを変更。
すももがスキャンダルに見舞われ姿を消したことに悲しむ山上さんのもとへ手を差し伸べたのは難波。ぽっかり空いた心の穴を埋めてくれる店として、泡姫の城へ連れていかれる山上さん。そこで出会ったのは、あの桃田すももだった。こんな仕事はさせられないと奮い立った山上さんは、店からすももを連れ出して自宅へ軟禁。2人の奇妙な共同生活が始まる。
クリエイティブワーカーズでの仕事がひと段落した南原は、保険の懸賞は外れたが子守の猛烈アタックによりディズニーへ行くことに。転職して生き生きと働いている邪兵にも出会う。2人は楽しい時を過ごし、子守は帰り道には少し真面目でセンチメンタルな顔も見せる。最後には「南原さん大好きです!」と言って去っていく子守。
そしてやってきた合併したジェネラルワークスジャパンとクリエイティブワーカーズの初めての顔合わせの日。佐倉の目の前には、インテリアの輸入をしていると聞いていたはずの難波の姿が。婚約話もすっとぼけられ、ここで初めて佐倉は騙されていたことに気づく。混乱に乗じて和泉真奈美は、難波に「お腹の中にあなたの子がいるの」と宣告。佐倉はとどめを刺される。
転職した邪兵は帰りが早くなったのだが、そこで一人娘が家に帰ってきてないことに気づく。探偵を雇って見つけた娘の居場所は山上の自宅。そう、邪兵の娘はすももだった。その流れで判明するのだが、邪兵の元嫁は芦沢さん。すももは幼いころに両親が離婚したので芦沢が母とは知らず、泡姫の手ほどきを受けていたのだ。なんて残酷。
難波は退職した邪兵の代わりにバンコクへ支社立ち上げのプロジェクトチーフとして派遣されるが、妊娠をうやむやにされていた和泉はバンコクまで難波を追い日本へ連れ戻す。その後病院で明らかになったのだが、和泉の妊娠は勘違いでただの生理不順だった。
どうしようもない可哀想な境遇の人々ばかりだとため息をついている一同だったが、須藤さんは気づく。
「いや…南原純。お前にはまだ希望がある。星空生命の子守!あれ絶対行けるだろ!」
同調する一同。こんなに条件が整っているのに断られるわけないんだから、告白しろ!と盛り立てる空気の中、ブロードウェイでフラッシュモブの武者修行を終えて日本に帰ってきた進藤麗子が登場。みんなで最高峰の告白、フラッシュモブをしようと提案する。
鬼のような練習を乗り越え、意を決してフラッシュモブを実施する南原と仲間たち。そして子守から返ってきた答えは・・・
「南原さんのこと異性としてみてないです」
また私の人たらしが出ちゃったな~なんでいつもこうなっちゃうのかな~と困惑する子守。彼女はあれが平常運転の模様。南原を振った子守は、そろそろ子どもの保育園の迎があるからと、帰っていくのであった。
マジでファック!!!
『ヤキー・ニックーと賢者の網』
ここはホグミーツ焼肉技術学校―――劇団しもべ妖精によるイントロダクションから始まり、これから壮大な焼肉ファンタジーが始まる!と思いきや、開始30秒で突然音楽が最高潮になり暗転。
俗にいう出オチ的な扱いのこのエピソードで、観客の皆さんはこの舞台に対する「覚悟」を決めるのでした。(すごくハードルが下がったよ)
『滝上幸次郎の話~炎上~』
滝上幸次郎、48歳。「肉と米は五分と五分」という信念のもと、彼は毎日、朝早くから炎の皆さんと会話をし、最高においしいお米を釜で炊き上げる。そんな「釜番」と言われる役割を長く続けていた彼のもとへ、店長からある日告げられた衝撃の宣告。
「お米は業者に任せることにしたから、もう炊かないでくれる?」
ショックを隠し切れない彼に、続けざまに宣告されたのは「滝上さん今日までだから。お疲れさまでした」の一言。そう、彼はバイトだったのだ。
生活が懸かっているため滝上は必死に生き残る方法を店長に問うが、ここで発覚したのが、滝上のあまりにも汚らしい米炊き手法が動画撮影され、SNSで拡散・炎上しているという事実。
滝上幸次郎、48歳。この日、職を失った―。(ザ・ノンフィクションの重厚感にのせて♪サンサーラ)
『肉キャバ』
今日も仕事を終え、夜の街に繰り出す2人の男。あぁ…腹減った…酒も飲みたいし、女の子とも遊びたい…。そんな2人の目に留まったのは、新感覚焼肉キャバクラ「BOY MEATS GIRL」…?
セクキャバならぬ肉キャバのここは、肉も食えて酒も飲めてカラオケも歌えて女の子が接客してくれる…まさにそこは天国だった。接客してくれるツラミちゃんに対し、男二人の要求はより過剰にエスカレート。そこで急に爆音に変わる店内BGM。
「おっ…ダウンタイムか…⁉」しかし男2人の期待が高まったところで、ツラミちゃんは退場。代わりに姿を現したのは、なにやら武装したハラミ姐さん。
「ほぉら!この肉汁が欲しいんだろーーー!!」の罵声と共に浴びせられる肉汁、レモン汁、タレ…。
「何だこの感覚は…こんな気持ちよさ…今まで体感したことがない…これは、クセになりそうだ…!!」
男2人は、幸せに満ちた表情で、「また来ます」と言い店を去っていった。
ツラミも、いつか肉汁を飛ばせるようになるだろうか。(ツラミの肉汁飛ばしの練習風景で暗転)
『続・滝上幸次郎の話~ミゼラブル~』
滝上幸次郎、48歳。彼は転職活動をしていた。48回、自分の年と同じだけ面接に落ちて途方に暮れる彼には、もう帰る家も無い。偶然訪れたお寺の境内で一晩を明かそうとしていた滝上だったが、和尚が声をかけてくれ、食事(焼肉)と寝床を提供してくれた。
感謝の念に満ちた滝上だったが、和尚が焼肉の時に見せてくれた純銀製のトングと皿が脳裏によぎる。そしてその晩滝上は、銀の皿を盗んでしまう。しかし滝上は翌日警官に取り押さえられ、和尚のもとへ連行される。だが和尚は罪を咎めず、むしろ銀のトングも譲ったはずだと言いそれも滝上に差し出す。
心洗われた滝上は、再起を誓うのであった。(ようはレミゼのオマージュです)
『絶体絶命』
夕暮れ迫る焼肉屋…その人は白い、ホルモンを噛む。一触即発の2人の女の前に、遅れてきた彼。
「さあさあ、はっきりカタをつけてよ」(なぜか冒頭で、山口百恵「絶体絶命」の生歌あり)
どうやらこの男、タイ人に似てることを逆手に取り、タイの王族キャラで女の心を掴んで、そのあと焼肉デートやシンデレラ城デートを重ねたのち、トゥクトゥク(マイカー)に乗せてタイの王宮(自宅)まで連れていくという手法がパッケージ化されており、複数の女性と同時進行をしていたらしい。彼の手法が暴かれていくうちに、なぜか意気投合していく2人の女。
そこで突如流れ出すのは山口百恵の「プレイバックPart2」の曲。彼の一連の悪事を歌詞にした替え歌が始まる。歌うのは「百恵」という名の店員。(あれ?さっき彼女普通にホールやってましたよね?)
「百恵ちゃ~ん、ちょといいかなぁ?」2曲を歌い終え満足げな百恵を呼び出す店長。
「お前何やってんだよ!…言っただろ勝手に歌うなって!お客さんびっくりしてるでしょ!」と、キレる店長。どうやら百恵は「もっと自分の色を出せ」と言われたことに対して自分なりに工夫してみたらしい。…なぜそこにいっちゃうのだ。
「今度歌ったらクビだからね、静かにして」…店長の発した「静かにして」に、百恵は反応せざるを得なかった。思わず山口百恵「美・サイレント」を口ずさんでしまう百恵。
店長「クビーーーー!!(暗転)」(これだけは実話を基にしています(…どの部分を?))
『滝上幸次郎の話リターンズ~再燃~』
滝上幸次郎、58歳。再起を誓った彼はその後、飲食チェーンの会社を興し、社長になっていた。
そんなある日、経営会議に向かう彼のもとへ、一人の男が飛び込んでくる。彼は船橋店でバイトをするタイ人だった。話を聞くと、どうやらSNSを炎上させてクビになり生活に困窮しているので、社長に直接何とかしてもらおうと飛び込んできたらしい。実は滝上の会社は、コスト削減のために「国産米を使用」と言いながら半分はタイ米を混ぜていたのだが、タイ人は良かれと思って「オリジナルブレンド!オイシイ!」と、SNSに混合米を作成している様子をアップしてしまっていたのだ。
哀れな姿のタイ人を見て、滝上はまるで昔の自分を見ているような気になった。そしておもむろに取り出したのは…あの時の銀の皿。
「お前にとっちゃ、タイ米が国産米だもんな。これ使って、どこか遠くでやり直せ」滝上はタイ人にそう声をかけ、送り出した。
その後の経営会議。もちろん議題はSNS炎上問題。会社をあげて社員のSNSをくまなく調査が行われたのだが、その結果発掘されたのは10年前に炎上した滝上自身の動画。
「社長!あなたは当社にとってリスクだ!今すぐご退任いただきたい!!」
滝上幸次郎、58歳。この日、職を失ったー。(2回目の♪サンサーラ)
『ヤキー・ニックーと煙の部屋』
またまた登場する劇団しもべ妖精。どうやら今回はしっかり尺が用意されているようだ。(ただし暗転中に着替えは間に合わない模様)
観客に対し、ここまでの話が楽しめてもらえているか拍手で確認を取る妖精。(まばらな拍手を期待しているのに毎回喝采で困惑する)
なぜか拍手喝采してしまうお客様たちに対して、ここまではただの茶番なんだから過大評価しないで!と懇願する。
開演からここまで約40分。そして、本編(約60分)はここからであることを丁寧に説明したうえで暗転する。(要はつなぎ・説明役のための時間です)
『世界で一番幸せになるためのメソッド』
BOYがGIRLにGRILしたMEATをきっかけにMEETしてしまったところから物語は始まる。歌声に乗せて進むのは、月並みな恋のお話――。
家族で個人経営している小さな焼肉屋「けむり屋」を営む原口家。向かい側に業界最強の焼肉チェーン店「寿々苑」ができたことで客足は減退し、廃業の危機に陥っていた。
一人息子の貴大は就活中の大学生だが、家がそんな状態なので家業を継ぐ気はなさそうだ。
そんな貴大がある晩、興味本位で参加した「肉コン(=焼肉合コン)」で、川名麻紀と運命的な出会いを果たす。その夜は、すごかったらしい。(しかし貴大は酔ってて記憶が無い)
しかしお互い連絡先を交換しそびれていて、もう二度と会えない…かと思っていた矢先、貴大が行きつけの焼肉スナックで偶然麻紀と再会。だがそこで判明したのは残酷な運命。なんと、麻紀は宿敵「寿々苑」を経営する「ポカホンタス」の社員だったのだ。
ライバル店の人間に恋をするなんて言語道断!と、貴大の父・友和は2人の仲を認めようとしない。しかし2人の禁断の恋の炎は簡単には消すことができなかった。そう、まるで炭火のように…。
その様子を見て嘆いているのは、けむり屋でバイトをしている亜希。麻紀とは同級生で、名前から好きな音楽に男の趣味まで似ていた、何かと因縁の相手。お互いの存在に気づいた2人は、「恋は早いもの勝ち」を合言葉に、どちらが貴大の心をつかめるか勝負を始める。(状況は麻紀が圧倒的有利)
そんな頃、父・友和はつぶれかけのけむり屋を支えようと、夜におかまバーのバイトを始める。どうやらよほどの好条件だったらしい。こっそり働いていたが、運命のいたずらで貴大と三浦(けむり屋のバイト)に働いているところを発見され、男3人の秘密ができる。その帰り道、3人の前に現れたのは、かつて会社を経営していたというホームレスの老人。彼の名前は、滝上幸次郎。思いやりを大事にする友和は、滝上を家に招き、焼肉を振る舞う。そこで友和の口から放たれた焼肉哲学に感動した滝上は、かつて自分の会社で成しえなかった新製品の釜の開発をけむり屋に持ち掛ける。特許は滝上が持っていたのだ。ここから、けむり屋の熱い新製品開発ドラマが始まる。(日曜劇場「〇王」風)
相変わらず密会を続ける貴大と麻紀だったが、麻紀は上司・神田の業務命令で寿々苑の新メニュー作りに忙殺され、なかなか貴大に逢えなくなる。新メニュー作りが上手くいかなかたら異動!と宣告された麻紀は、貴大と離れたくないから必死に頑張るも、結果的に無理な生活リズムと試食のし過ぎで徐々に太り始めてしまう。お腹が大きくなっていく一方のこの状況を嘆いて、焼肉スナックのママに相談している会話を偶然耳にした貴大は、麻紀が妊娠したのだと勘違いしてしまう。三浦に喝を入れられた貴大は、責任を取ろうと決意を固め、両親に結婚の相談をしに行く。急な話に驚きと失望を見せる両親だったが、かつて自分たちも学生結婚をして頑張って乗り越えた過去があることを打ち明け、貴大を応援する。(両親の出会いは、妻・百恵が焼肉屋で山口百恵を歌っていた姿に友和が一目ぼれしたのがきっかけらしい)
麻紀のもとへ行き、「世界で一番幸せにするから!!」と全身全霊のプロポーズをする貴大。だがそこで発覚する真実。麻紀「妊娠?してないよ?」
時を同じくして、友和は滝上の特許がすでに他者に売りに出されていることに気づく。そこへやってきたのはポカホンタスの神田。かつて店長時代、滝上を首にした張本人の彼は、滝上の特許をポカホンタスで買い進めようとしていることを告げる。その陰で動いていたのは、かつて滝上から銀の皿を譲り受けた、あの時のタイ人、ナパチャット・ワンチャイだった。彼はタイ王族とのコネクションを利用し、滝上の過去のSNSがもう世の中に出回らぬように圧力をかけ、滝上に自分の経営する会社の日本法人の社長になってほしいと打診する。快諾する滝上。
神田「ぁこれにて一件落着!」
友和「ちょちょちょ!うちの店の経営はどうなんの⁉」
滝上「おかまバーやればいいじゃない」
また時を同じくして、貴大がプロポーズをしに行ったことを知り完全敗北を宣言する亜希。「私も幸せになりたい!」とママにボヤくと、ママから「うちで働いてみないか?ちょうど昔のサービス復活させたかったんだよね」と提案が。ママから亜希に手渡されたのは、肉汁をぶっかけるためのタオルだった。そう、ママはかつて肉キャバで働いていたハラミ。ここにまた、新たな肉汁師が誕生するのであった……。(完/よくこれで終われたな)
某ITコンサル会社に勤める橋本は、超大型商談のプレゼンを控えていた。前日徹夜でプレゼン準備を終え、眠気に耐えながら迎えた当日。昼に別案件の打ち合わせを終え、プレゼンは16時から。外出先からプレゼン資料を取りに会社に戻ろうとする橋本だが、そこで突如猛烈な腹痛に襲われる。
橋本は、こんなところでつまずいている場合ではなかった。なぜなら、今夜は職場で片思いの「みーちゃん先輩」との2人きりのデートにやっとこぎつけることができたからだ。 とっととスッキリして万全の態勢でプレゼンに臨みたい橋本だったが、コンビニを何軒はしごしても、並んでいたり清掃中だったり貸出NGだったりして、全くトイレにありつけず。最後の手段として救急車を呼ぼうとするも、隣でおばあちゃんが倒れ救急車はあけ渡す。
あきらめて会社まで歩いて帰るも、避難訓練でエレベーターは使えず。11Fには今日のプレゼンの資料があるのに、エレベーターが動き出すまで待っていたらプレゼンには間に合わない。しかも1Fにはトイレは無い…。橋本は意を決して、肛門を締め付けながら階段を11Fまで上りきる。無事プレゼン資料を回収し、自分の会社のフロアなら確実にトイレにも行けると思ったが、いつになってもトイレは空かない…。もうこうなればどこまでも我慢してやると決意した橋本は、トイレをあきらめてプレゼン会場に直接向かいトイレを借りる作戦に切り替える。
電車に飛び乗り、ギリギリ間に合う時間に最寄り駅にたどり着くが、なんとそこで痴漢の冤罪をかけられ駅員室の奥に連行されるというアクシデント発生。しかし橋本は、勢いでその場を乗り越え脱走する。
プレゼン会場を目の前に、橋本はついに限界に達してしまい、その場で漏らしてしまおうという考えがよぎるが、ふと頭をよぎったみーちゃん先輩の姿で正気に戻り、プレゼンをやりきる。
極限に達した橋本のプレゼンは狂気に満ちたものだったが、それが良い方向になびき、情熱にあふれた素晴らしい出来になった。
達成感に満ち、プレゼン会場をあとにみーちゃん先輩のもとへ向かおうとした橋本だったが、安心してふとくしゃみをしたその瞬間、橋本はうんこを漏らしてしまうのであった…。
➤解説&余談
代表じゃるが、関東での舞台復帰の第一歩として参加したイベント。岩手で「もう演劇はやりません」宣言をしてからの、前言撤回。4年ぶりの舞台出演でした。
何度本番やっても脚本の中身を数ページレベルで飛ばしたり急に元に戻ったりをやらかしたため、スタッフさんから「本番中に脚本の時間を自由に操るスタンド使い」という称号を得るハメになった問題作。ひとり芝居初体験かつ久しぶりの舞台だったから…という言い訳をしているじゃる。
写真も映像も記録が残っていない幻の作品。